20210122


小学校5年生の時、地元田無のアスタという商業施設に買い物に来ていた。
たぶん土曜日の昼過ぎくらいだったと思う。
 

2階のサーティワンアイスクリームの前が広場になっていて、週末は大道芸とかコンサート、くじ引き大会とかやっていた。
けっこう純粋に、大人も子供もそういったイベントをゆるく楽しんでいた時代だった。

その日は、若い子たちの人だかりができていて、いつもと違う熱気を感じた。
遠くからでも聞こえるほど、キャーキャーと歓声が上がるので、母と近づいてみたが、観客が多すぎて、その姿を見ることはできなかった。

しかしその日、アスタに営業に来ていたのは、若き日の爆笑問題だったのである!

女の子たちが「かわいー!」「小さーい!」と叫び、太田さんが「うるせー静かにしろっ!」と怒鳴り、それに反応した観客がまたキャーキャーで、全然ネタに入らなかった。

その時、小学生の私は吃驚していた。

かわいいというのは、女の子に対して使う言葉だと思っていたから、
若い女の子たちが男の人に向かって「かわいい」と叫び、
「かわいい」に対して怒鳴り散らす男。まあ、怒るのも当然だと思ったが、この異様な光景に、足がすくんだ。

簡単に言うと、庄野真代のコンサートにしか行ったことのなかった私は、”やじ”というものを知らなかったのである。
(人生初のコンサートは田無の市民会館の庄野真代のコンサートだった。さっきネットで調べたら、庄野真代、25年前の姿とぜんぜん変わってなくて美人だった。私の方が老けた気さえする)

話を戻すと、「かわいい」と叫んでは怒られ、それに興奮する観客。
この関係性について恐怖を感じたのである。

「お母さん、男の人に対して、”かわいい”って言ってもいいの?」

と聞いた。すると母は、

「小さいから、いいんじゃない?」

と、適当なことを言って、
「爆笑問題って名前、聞いたことあるかも」
と、つぶやいた。

結局姿もネタも見ることはできず、私たちはその場を去った。

バブルははじけていたけど、今と比べればかなり景気のいい時代だった。
アスタの2階には、爆笑問題よりももっと有名な芸能人が来ていたかもしれない。

だけど私はあの日、「野次を飛ばす」という言葉の意味を体感するとともに、爆笑問題の名前を胸に刻んだのである。